黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う




ゆっくりと広がっていく視界は、ただただ暗くて。

私は何故か漠然と、“ここ”が夢だとわかった。

生暖かいものに包まれているような、そんな、気持ちの悪い感覚。

私はぼんやりと何も無い虚空を見つめる。

ああ、ここは、何も考えなくて良くて、楽だ・・・


思考も蕩け始めたころ、じっ、という耳触りな音が鼓膜を揺らした。

思わず顔をしかめるが、先程まで何も無かった場所に誰かが立っているのを見つけて目を見開く。

手を伸ばせば届きそうな距離。それなのに、どこかぼんやりとして姿がはっきりと見えない。

「・・・だれなの?」

自分が思っていた以上に幼い声が出て、驚く。

夢の中だからか。少しばかり恐怖を感じている本心が隠せないようだ。

目の前の人物が微笑んだ気配がしてじっと目を凝らす。

「さぁ、誰でしょうね?」

声ははっきりと耳に届くのに、顔は、見えない。

嘲るような、哀しむような、それでいて慈愛を含んだ、可笑しな声。

「私の夢、なのに、知らない人が出てくるなんて、おかしいでしょ」

戸惑う様に揺れる私の声に、目の前の人物はやはり笑う。

「果たして、ワタシは、知らない人なのでしょうかね、なんて」

「え・・・」

何が言いたいの。

ぼんやりふわふわして、頭がよく回らない―――

息を呑んだ私に、その人はまた笑った。

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