癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
無理難題?
B.Cコンピュータからの翻訳の仕事は、
いくらユーザーマニュアルとはいえ、
コンピュータ知識の乏しい私にとっては大変な仕事だった。

とはいえ、自分が一番なりたかった翻訳者としての仕事。
どんなに難しくても経験を積むことが今の私にとって第一。

なんとかやり終え、Web上で作業終了の報告をした。
今日はカフェの仕事もないし、DVDでも見て、のんびり過ごそう。
そう思っていた矢先にスマホが鳴った。
着信は、B.Cコンピュータだった。

「はい、白石です。」

「おはようございます。
お世話になっております、B.Cコンピュータの小林です。」

「こちらこそ、このたびはありがとうございました。
あの…、何か不備がございましたでしょうか。」

「いえ、お仕事はきちんとされております。
ただ、うちの社長の方で白石さんを交えて
お話しさせていただきたいことがありまして…。」

小林さんは歯切れの悪い、いいにくそうな感じだった。
相手の求める翻訳とうまくかみ合わなかったのだろうか。
不安がよぎる。

「わかりました。それでどのようにすればよろしいでしょうか。」

「突然なのですが、今日、お時間は取れますでしょうか。」

「はい。大丈夫です。」

「では、午後3時に当社においでいただけますでしょうか。」

「承知いたしました。3時ですね。伺います。」

「お手数をおかけいたします。よろしくお願いいたします。」

「こちらこそ。失礼いたします。」

電話での受け答えはできたものの、
小林さんだけでなく、社長さんが?なんで?
もしかしたら、新しい仕事のお話かもしれないが、
あまりに突然のことでどうしていいかわからなかった。
まぁ、出先で電話を受けなくてよかった。

服装はどうしようか。
社長さんにははじめてお目にかかるから、
パンツスーツよりもスカートのほうがいいよね。
ああでもない、こうでもないと自分でぶつぶついいながら、
仕度をして、B.Cコンピュータへと向かった。
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