俺様社長の溺愛宣言

零士side

今までで一番長いキス。俺は、そっと唇を離すと、ハッと我に返った満里奈が、あのときのように俺の頬を叩こうとした。

…パシッ。

「…そう何度も同じように叩かれるつもりはない」
「…どうして、こんなことするんですか?」

涙目で訴える満里奈に、俺は、迷うことなく言い返した。

「…お前が好きだから」
「…私は、社長の事、嫌いです」

そう言うと、溜まった涙がポロッと落ちた。

俺は、その涙をそっと拭う。

「…今は嫌いでも、必ず好きにさせて見せる」
「…離してください」

先程から掴んだままの手首。満里奈は振り払おうとするが、俺は絶対離さない。

「…来い」
「…嫌です」

「…これは、お前へのペナルティだ。業務命令に逆らった」

その言葉に、満里奈は黙りこむ。

そんな顔をさせたい訳じゃなかった。俺は、ただ、満里奈に想いを知ってほしかった。

…今日、同じ庶務課の男と話しながら歩く満里奈を見た。

その時の、屈託のない笑顔が欲しいと思った。

そんな男ではなく、自分に向けてほしかった。

自分の真意も言えないのに、満里奈に心を開いてほしいなんて、自分勝手にも程がある。

本音は心に閉じ込めたまま、俺は満里奈を地下にある重役専用の駐車場に連れていくと、無理やりそれに乗せた。

「…何処に行くんですか?」
「…着けば分かる」

それだけ言って、車を発車させた。

…着いたところは某ホテルのレストラン。

適当なコースを頼み、二人でそれを食べる。

その間も、終始満里奈は浮かない顔をしていた。
< 14 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop