俺様社長の溺愛宣言

満里奈side

「…サイッテー!!!」

これでもかって言うくらい、おもいっきり頬を叩いた私は、泣きながらそう叫ぶと、社長室を飛び出した。

何度も唇を拭いながら、庶務課のドアを開けて中へ。

ドンッ。

…誰かにぶつかった。

「…す、すみません」
「…どうしたの?渡辺さん…泣いてるの?」

「…ぇ、ぃや、これは、何でも」

ぶつかった相手は、庶務課の癒し系の男性社員、水嶋奏(みずしまかなで)(28)。

私が泣いてることに直ぐに気づいた奏は、ポケットからハンカチを取り出すと、私の涙をそっとぬぐった。

「…だ、大丈夫です。ハンカチが汚れちゃう」
「気にしないで」

いたたまれなくなった私は、奏の手を下へ下ろした。

「…あの、すみません。ありがとうございます。もう本当に大丈夫ですから」

そう言うと、そそくさと自分のデスクに向かう。

…が。

奏が私の手を握り締めた。

かぁっと、顔が熱くなる。

「…2年も一緒に仕事してるのに、俺といることまだ慣れないんだね」

その言葉に奏を見上げると、奏は寂しそうに微笑む。

…今日は私の厄日なんだろうか。

零士といい…

奏といい…

男なんて、キライだ。

「…あの、すみません。ちょっと急用が」

困惑顔で答えれば、奏は溜め息をついた。

「…そう、気をつけて」

私は鞄を持つと、逃げるようにオフィスを出ていった。
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