高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
愛嬌者ですがキュウアイ中です。
天気予報では梅雨明けを告げた7月中旬。

きんきんに冷えたアイスコーヒーが体の熱を効率良く下げてくれている。

「で、返事は?」

藤崎社長が商談のためにでかけている頃合いをみつけ、昼休み、時頼さんにランチに連れてこられた。

黙ってご飯を食べ、食後のコーヒーを堪能していたときに、向かい合わせに座る時頼さんが口火を切った。

「返事といわれても」

「って、なんだよ。まだ別れてないのかよ」

周りのお客さんは絶対に恋人同士の会話なんだろうな、と思ってるんじゃないだろうか。

テーブル席の間をあけて座っていた会社の仲間でランチに来たであろう4人組の女子グループのひとたちがこぞってそば耳を立てている。

「別れろって言われても。まだ付き合ったばかりで、それに」

藤崎社長との契約がることなんて正直にこたえられないし。

半分残ったアイスコーヒーの氷がからんと音をたててグラスの底に沈んだ。

「付き合ってくれた、だと? 彼氏として失格だな」

失格だなんて。

確かに由基はあれからメールの返事にも応対してくれなくなった。

わたしの態度がいけないのかもしれないけれど。

それなのに、藤崎社長のことを想う気持ちが高まってしまう。

「本当に付き合ってるかどうか、おかしいと感じたことはないのか?」

反論したかったけれど、急に胸がくるしくなる。

「普通の男だったらな、こうやってごはん食べてるときだって、大好きな彼女のこと気にしてるんだぞ」

「……そうなんですか」

「そうだよ。じゃなきゃ誰かにとられちまうだろ」

そういって時頼さんはじっとわたしを見据えながらアイスコーヒーのグラスを空にした。
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