あなたに捧げる不機嫌な口付け

きっと、思い出すよ。

ざわめく教室。

帰りのホームルームはまだ始まらない。


着席して大人しく担任を待つ私のスマホが、着信を伝えて振動した。


誰だろう、と名前を確認すれば、何日かぶりの諏訪さんである。


……どうしようか。今電話に出るのはさすがにまずい。


校内での使用は禁止されていないんだけど、節度を守ること、という注意喚起はされている。


電話はよくない。


とりあえず一旦流してメッセージを送る。


『ごめん、今電話出られないからこっちだと助かる』


送信して返事を待っていると、遅れてごめんなー、と担任が入って来た。


追随するように諏訪さんから返信が来てしまう。


……ああもう、さっきからいろいろと間の悪い。


ホームルーム中にスマホを弄ると特大の雷が落ちるので、机上に載せたまま手は膝の上へ。


使っていませんアピールと、文面の視認をこっそりする。

身の潔白は証明しておかなければならない。


この先生は至極話が長い上に何度もたとえ話を繰り返すので空回りして、そしてちょっと面倒臭い。


私はじりじりと終わるのを待った。
< 70 / 276 >

この作品をシェア

pagetop