エリート外科医の一途な求愛
過剰サービス
オペ室の中二階の高さにある見学ルームは、普段ならあり得ないくらいの見学者が入り、妙な熱気に包まれていた。


見学者の大半は心臓外科医局に所属する研修医だ。
もちろん、出張から帰ってきた教授も入室している。
それから他の外科医局の講師や助教、プラスして私とテレビ番組制作会社のスタッフ……と、ちょっと動くだけで肩が触れそうなほど、混雑している。


大きなガラス張りの窓の向こうには、附属病院のオペ室が見下ろせる。
国内でも最先端の医療機器を取り揃えた、外科医の聖域。
これからここで、心臓外科の中ではもっともポピュラーと言っても過言ではないくらい実績数の多い、冠動脈バイパス手術が行われる。
執刀医は、各務先生だ。


手術予定時間は四時間。
元々各務先生が執刀するオペは見学希望者も多いけれど、今日はテレビ撮影が入るとあってか、いつも以上に希望が殺到した。
そのため、研修医たちは何グループかに分かれて交替での見学になった。


オペ室内の隅っこには、大きなテレビカメラを構えたカメラマンが二人いる。
そのカメラが今、手術台に横たわった患者さんの全身麻酔が施される様子を捉えていた。
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