次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
バレた誤解
パーティ会場は駅から少し離れたゲストハウス。白と茶色でまとめられた外観はヨーロッパの郊外にありそうな暖かみのある雰囲気だ。周囲に植えられた樹木のせいで外から隔離された感覚を演出しているのも非日常的な気分になれる。

流石ルナさんは会場選びもセンスが良い、と浮れる久美ちゃんが弾むようにドアを開けた。

「いらっしゃーい!文香ちゃんと、久美ちゃんと‥‥湊ちゃん?」

黒のトップスにスキニーパンツ、アクセサリーは大ぶりなビジューのネックレスだけという服装はシンプルながら夏希さんの魅力を引き出している。完璧に着こなしてるから地味にもなっていないし、自分をよく分かっているコーディネートだ。

「今日はお招きいただいてありがとうございます。お言葉に甘えて友人も一緒に来させて頂きました。國井常務は先約があって失礼させて頂きましたが、大変残念がっておりました」

個人的知り合いとはいえ、一応、会社絡みの繋がりもある。失礼のないように挨拶をすると、夏希さんが不満げな声をあげた。

「もー、文香ちゃんってばそんな他人行儀な話し方しないでってば。うちの父も言ってたでしょ?文香ちゃんにそんな風に話されると寂しくなっちゃうんだから」

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