左手にハートを重ねて
「先生って、いつから私のことが好きだったの?」
「……そんなこと、聞くんじゃない」
「聞きたい。だってまだ、好きって言われたことないもん」

 すると先生は、ツンツンと私の左の薬指を指差した。

「だからこの指輪を作ったんだろ?」

 さっきまでとは違う涙が溢れだす。

 私はソファの下にひざまずいている先生の首に腕を回した。
 彼の唇に、自分の唇を押し当てる。
 すると先生は、大事なものを扱うように、優しく私の頬を撫でてキスを受け止めてくれた。

 タバコの味がする口内に、しっとりと自分の舌を絡める。
 子どものために禁煙するって言っていたけれど、こっそり吸ってたんだね。

 先生は、嘘がヘタだ。
 決して感情をおもてに出したりはしないけれど、些細な言動に、気持ちが散りばめられている。

 なのに、そんな先生の不器用な愛情に気付けなかった私は、どれだけお子様だったのだろう。
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