左手にハートを重ねて
 力強い腕でベッドに運ばれ、そっと横たえられる。
 彼は私の着ていたワンピースをはぎ取り、下着の上から体のラインをなぞった。

 先生は、本来は彫像を専門にしているので、体の線にとても興味があるらしい。

 以前より膨らんだ胸を手のひらで包み、やわらかく円を描く。
 そして肩紐を親指にからませてはずすと、そのまま引き下げた。
 彼の射抜くような瞳に見つめられて、羞恥のあまり視線をそらしてしまう。

「せんせ……」
「先生はやめろ」
「……順平さん」

 名前を呼んだら、先生は表情を和らげて私にのしかかってきた。

「優香がオッサンなんか嫌だっていっても、もう無駄だから」
「ん……」


 薄暗い部屋。大きなダブルベッドの上質のシーツの上で、ふたりの手足が絡みあう。

 先生は、45歳にしてはいい体躯をしていると思う。
 粘土で彫塑《ちょうそ》を作るのは意外と体力がいるらしく、とくに肩のあたりの筋肉がすごい。

 彼は、指先に目がついているんじゃないかと思うくらい、私の感じるポイントを正確に責め立てた。

「今まで悪阻がひどかったから、遠慮していたんだ。でも結婚初夜くらい、好きにやらせろ」
「好きにって……んん」

 粘土の細かい部分をかたち作るように、私を小刻みに刺激する。

 私は指先の愛撫に身をゆだね、ひたすら彼が送りだす熱を受け止める。
 キスをしていた唇が、首筋を伝って胸もとへと下りていく。

 先生の瞳のなかに、上気した顔の私がいる。
 きっと私の瞳にも、彼の熱っぽい顔が映っているはずだ。
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