エリート御曹司とお見合い恋愛!?
5.素直すぎるのも考えもの
「もう、無理、です」

 息も絶え絶えに訴えかけるも、倉木さんはまったく聞き入れてくれない。

「音を上げるの早すぎない? まだまだこれからでしょ?」

 いつもスーツに隠されていた腕は思ったよりも逞しく、私はそちらに、ちらりと視線を送った。程よく引きしまった体つきは女性の私から見てもなかなか羨ましい。

 こんなふうに男の人の体をまじまじ見つめることはなかなかないので、いつもなら、なんとも照れてしまうところだけれど、今はそれどころではない。

「はぁ」

 私は大きく息を吐いて、そっと漏らした。

「初めてなのに」

「だから優しくしてるつもりだけど。ほら、頑張って」

 独り言のように呟いた言葉を倉木さんはちゃっかり掬い取って切り返されると、なにげなく頭に触れられる。

 おかげで苦しい心臓がさらに締めつけられ、切れ切れな息が止まりそうだ。こんなの反則すぎる。涙目になりながら、私は足を動かした。
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