オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

3



「都…な、なんで、こ、こんなところに…!?」


けれど、その絶対零度の沈黙を勇敢にも打ち破ったのは基樹だった。なんとも情けない阿呆のような声だったけれど。


「どういうこと?」

「だ、っておまえ、友達の家にいるって―――」

「どういうことって訊いてるのよ!」


我ながら驚くくらいの大声が出た。蚊の鳴くような基樹の声など遮るどころか蹴散らすほどだ。本当に怒りに染まると、人はこれほどまでに周りを気にせず感情を剥き出しにしてしまうものなのか。

どうして。
どうしてここにいるの? どうしてあんたたちみたいな部外者がここに? 

ここは地元の人しか知らない、まだどこにも紹介されていないスポットなのよ。

私と向居だけが、知る場所なのよ―――。


「卑怯者! 盗んだわね…! 私の情報を、私が苦労して集めたリサーチを、盗んだわね!!」


基樹をなじる第一声。
『どうしてここにいるの?』でも『その女は誰?』でもなく、私の努力を奪ったことを責める第一声が口を吐いた。
そのことに私は驚き、同時に胸に決める。

基樹とは、今ここで『さよなら』をするのだと。
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