カノジョの彼の、冷めたキス


渡瀬くんもあたしと同じで気まずいのかな。

渡瀬くんと顔を合わすのは照れ臭くて恥ずかしかったけど、彼も同じように思ってくれているなら少し嬉しい。

着替えを済ませて荷物をまとめて渡瀬くんが待つラウンジに向かうと、窓際の席でパソコンに向かう彼の姿が見えた。

渡瀬くんが座るテーブルに近寄っていくと、彼の正面に回る。


「お待たせ。チェックアウトしてくるね」

声をかけて、緊張気味に微笑みかける。

前夜のこともあってか、あたしは渡瀬くんが優しく微笑み返してくれることを期待していた。

というよりも、自惚れていた。


「あー、うん」

だけど、渡瀬くんはパソコンから視線もあげずに短く相槌を打つだけだった。

渡瀬くんのそっけない態度に、浮かべた笑みが徐々に消えていく。

しばらくして仕事を終えた渡瀬くんは、そのあともずっとあたしに対してどこかそっけないままだった。


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