カノジョの彼の、冷めたキス
「悪い。ちょっとやりすぎた」
ぼそりとつぶやく声が聞こえて、ひんやりとした指があたしの頬を拭う。
目を開けると、渡瀬くんがあたしを見下ろして苦く笑った。
「渡瀬くん?」
名前を呼ぶと、渡瀬くんがどこか切なげな目であたしを見つめる。
その目を見つめ返していると、渡瀬くんがあたしの額に不意打ちでキスをした。
突然のことに目を瞬いていると、彼がクスッとからかうように笑う。
「斉木さん、おやすみ」
優しい声でそう言ってから、渡瀬くんはあたしから離れてダブルベッドのシーツの隙間に身体を滑り込ませる。
そうしてあたしに背を向けるように寝転ぶと、もうあたしに触れることはなかった。