熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「お帰り、綾乃。お疲れ様」


相変わらずベッドばかりが存在感のある寝室。
優月はキングサイズのベッドの上で足を投げ出すように座って、その上に分厚い本を広げている。
そこからちょっと目線を上げて、チラリと私に視線を流してきた。


「もう風呂入ってきたのか?」


タオルドライしただけで、頭の後ろでシニヨンにしてまとめた私の髪を見て、優月はそう訊ねてきた。
私は頷き返しながら、後ろ手でそっとドアを閉め、そこに一度軽く背を預ける。


「今日の午後診察にきてくれたドクターの話じゃ、マリーの足の腫れもだいぶ引いてきたみたいだな。明日は無理でも、明後日なら飛行機乗せられるかな」


優月はそう言いながら足の上の本を閉じ、それを軽く脇にどけた。
ベッドから降りようとしてるのが感じられ、私は思い切って優月の方に近寄る。
ベッドサイドに腰掛けた格好の優月の前で、私は足を止めた。


「ん? 何?」


首を傾げる彼の隣に、ちょこんと腰を下ろす。


「ね、ねえ優月! 昨夜言ってたマッサージ、してほしいな」


わざと明るく声をあげて、我儘にお願いしてみる。
途端に優月はギョッとした表情を浮かべた。
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