熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
やっぱり昨夜眠っていないのか、目の下にはうっすらとクマが浮かんでいる。


「社長、お疲れ様です」


私は手にしたままだったPHSを卓上ホルダに挿しながら、顔を上げて優月に笑いかけた。
けれど彼の顔は強張ったまま、とても険しくて厳しい。


「悠長な挨拶してる場合じゃないだろ! どういうことだ!?」


優月は苛立ちを隠す様子もなく声を荒らげ、私のデスクに拳を打ちつけた。
バンッという音に反射的に肩を竦めながらも、私は優月を真っすぐ見つめる。


「俺に一言の相談もなく、勝手にコメント内容変更して……しかもその責任を取って辞めるだと? 副社長も広報部長もいたのに、どうして誰も止めないんだ……!」


彼は忌々し気に舌打ちして、乱れた髪を更にグシャグシャと搔き乱す。


「だって……記事で社長が酷い書かれ方したのだって、その結果穂積グループのイメージダウンを招くのだって、元はと言えば私のせいです。だから皆さんご理解くださって……」

「俺についての内容は、あながち間違ったものでもない。企業イメージへの影響も、お前が気にすることじゃない。後継者として社長を辞任できない以上、俺が仕事で挽回すればいいだけだ」

「そうやって優月はいつも私を守るから! 相談したって、止めるだけだったでしょ!?」
< 231 / 255 >

この作品をシェア

pagetop