・キミ以外欲しくない
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「……どうでしょうか?」
素敵な部屋で、二人きり。
色気のある話をするでもなく、風呂上がりの私はリビングに飛び込むなり、副社長に仕事話を持ち掛けていた。
全ての物を一流品で揃えるのは、やはり私のような庶民には手が届かないことを実感したから。
「毎日暮らすのに、身近な物。例えば消耗品等は背伸びをする事無く、敢えて手頃な品を揃えた方が生活イメージが沸くというか。身近な生活が想像できるようなお部屋で、手が届きそうな気がするんじゃないかなって」
思いついた勢いで力説した私の話を、黙って最後まで聞いてくれた副社長は「いいんじゃないか」と認めてくれた。
「明日は休みだし、実際に見に行ってみるか? いいものがあれば揃えてしまってもいいし」
「はい! でも、簡単に変更などして大丈夫でしょうか。次の会議で皆さんの合意を得た方が……」
「これは君の企画だ。小さな変更等構わない」
副社長が言ってくれるだけで、不安が自信に変わる。
不思議なことに、何でも出来てしまう様な気にさえなってしまう。
「朝からデートなんだから、早く寝ろ」
「はい?」