・キミ以外欲しくない
「誤解するな、新居に引っ越すカップルのつもりで品定めした方が、良い物が選べるだろ」


あ、そういうこと?
私に部屋を解放してくれた時と同じように「なりきって体験しろ」ってことか。


「分かりました、明日は宜しくお願いします」

「おやすみ」


与えられた部屋に入り、布団に潜ると思わず「ふふっ」と笑みが零れてしまうのは、思い出し笑いだ。

冗談で「おやすみなさい、真司郎さん」と不意打ちで口にした私に、驚きながらも頬を染めていた副社長に気付いてしまったから。

ちょっと可愛かったな。なんて思ったりして。


枕元に積み上げた書類や参考資料などを、スタンドライトの下で広げる。
時間短縮のためにも「お店のめぼし位つけておいた方がいいかな」と思い、ショップリストのページを捲り、気になったお店に付箋をつけた。


どのくらい時間が過ぎたのだろう。
資料を照らしていたはずのライトが消えている。
確か明日の為に、色々と下調べしていた途中だったはずだ。
眠い目を擦りながら辺りを見渡すと、ぼんやりと人影が見えた。


「ん……。真司郎さん?」


だよね? それ以外考えられないけれど。
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