ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
ひざまずいて、愛を乞え。

 蒼佑との二泊三日の旅は、ふたりの仲を一歩先に進めるものになった。
 葵にとってはそれは大きな一歩で、実際、とても勇気がいるものだった。

(今日で、有休は終わりかぁ……)

 旅先から戻り、また蒼佑とふたりで屋敷に戻ってきている。

 月曜日に帰宅し、火曜日は蒼佑に習いながら、華をいけたり、お茶をたてたりしてすごした。

 そして今日は、水曜日。最後の休日だが、一時間ほど前に昼食を終えて、お茶を飲み、それから縁側にクッションを並べて、そのうえでゴロゴロしながら、本を読んでいる。あまりにも平和な時間過ぎて、少し不思議な気がするくらいだ。

 明日から、葵も蒼佑も仕事に戻ることになっているのだが、葵は少しばかり憂鬱な気分がぬぐいきれなかった。
 久しぶりの仕事のことを、気にしているわけではない。

 出勤一日目は、昼からの出勤シフトにしてもらっている。体だって問題ない。強い痛みはほとんど引いた。退院してから一週間、蒼佑のおかげで基本的にはゆっくり過ごせたし、仕事にもそれほど影響はしないと思う。

 問題は、蒼佑とのこれからのことだ。

 いくら思いが通じ合ったとはいえ、葵は元婚約者で、今はただの人だ。

 天下のHFの御曹司である蒼佑とは住む世界が違う。
 そして彼はひとり息子だ。当然、蒼佑の将来は決まっている。
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