愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
鷹野部長の独り言
 俺の名前は鷹野遼一。十五歳。

 父親に連れられて、今日は十五にして見合いとやらに行かなければならないらしい。相手はひとつ年下の十四歳。どこぞの会社のやんごとなき令嬢だと聞く。

 互いにまだ結婚できる年でもないし、一応許嫁という契約を交わすだけのことみたいだ。

 一ヶ月に一回、父の会食によく連れて行ってもらっているすず亭に着くと、すぐに特別室に通された。俺がここへ来ると、いつも決まって茜ちゃんという小さな女の子が出迎えてくれるはずだが、今日に限ってどこにも姿が見えなかった。

 十二畳ほどの品のある和室に、違い棚にはなにやら骨董品のようなものが飾られている。父とふたりで相手方を待っていると、ほどなくして両親とともにやってきた。

 大人同士の挨拶もほどほどにして、お決まりのように後は若い者ふたりで……ということになり、俺は目の前でおしとやかに座っている日本人形のような彼女とふたり残された。

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