悪魔の囁きは溺愛の始まり

傷跡

いつもとは違う感覚に体を勢いよく起こした。

見渡せば…………甦る記憶………

ベッドの上で頭を抱え込んだ。


「一花、おはよ。」


聞こえてきた声に隣へと視線を向ければ、案の定、蒼大さんが寝転んでいる。

顔を隠すように蒼大さんから顔を背けた。

昨日は化粧も落とさず、そのまま眠ってしまったのだ。こんな酷い顔は見せられない。


「一花?」

「ごめんなさい。あのまま寝ちゃったみたいで。」

「謝る必要なくない?」

「だって………飲みっぱなしだし、化粧も落としてないし、話も途中だっただろうし。」


落ち込んで顔を膝の上に埋めれば、クスクスと笑う声が聞こえてくる。

楽しそうな蒼大さんの笑い声に視線だけを向けた。


「俺も片付けてないし、一花と一緒に寝ちゃったから落ち込む必要ないって。」

「でも………だらしないって思われた。」

「いや、意外な一面が見れて楽しい。慌てる一花なんて見たことなかったから。」


笑う蒼大さんに内心ほっとしていた。
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