マリンシュガーブルー
5.男は見かけによらぬもの

 なのに、彼が急に来なくなった。
 梅雨本番で雨ばかり降っている。天候が悪いだけで客足が減る。

 奥様方もこのような天気では、たとえ車でいつでも出かけられるといっても、カフェでランチという気分にはならないだろう。

 もしかして、あの人も? 徒歩だから、雨が続くと来にくくなるの?

 いつのまにか彼を待っている自分に美鈴は気がついてしまう。ふとすると溜め息までついている。

 それは弟も同じ。漁港の市場で仕入れた食材で渾身のランチを作っても来客は少ないし、食べて欲しい彼を心待ちにしている。

 それでもトラックドライバーは天候は関係なし。今日も港のフェリーから降りてきたドライバーが長距離走行をする前に立ち寄ってくれる。

 では、この前のようにディナーにくるかもしれない。そう思って待つこと十日ほど。やはり来なかった。
 夜も雨の日は、客入りは少ない。OLさんが2組だけ。

 弟もすぐに手が空いてしまった。

「なあ、あの人が来ないのは、長雨のせいかな」
「かもね……。どこかから歩いて来ているなら、少しの距離でも濡れるのは億劫だものね」

 自分もそうだから。美鈴も溜め息をつく。
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