過保護なドクターととろ甘同居
「来てくださったんですね、ありがとうございます!」
「ご無沙汰してます。お元気でしたか?」
「おかげさまで、妻も子どもも元気にしています」
長いコック帽を頭から取ると、短髪の髪が寝癖がついたように立っていた。
少しふくよかなその男性は、四十代前半くらいだろうか。
くしゃりと笑うと目がなくなるように細くなり、その笑顔と話し方からは人柄の良さを感じさせた。
「一流シェフの味、堪能させていただきました。どれも絶品でした」
「それは良かったです! 今日、ご一緒なのは……?」
シェフのにこやかな顔が私へと向けられる。
急に話題の中心にされて、慌てて「あっ」と言葉に詰まってしまう。
そんな私を先生はフッと笑うと、シェフへと目を向けた。
「彼女は、うちの新しいスタッフです。今日は面接がてら、同行してもらいました」
そんな風に紹介されて、こんな形でさっきの返答をもらったことに、私は驚きの眼差しを先生に向けていた。
これから、先生のところでお世話になるということ。
人生、何が起こるかわからない。
二人の会話を徐々に遠くに聞きながら、そんなことをしみじみ感じた夜だった。