溺甘スイートルーム～ホテル御曹司の独占愛～

幸せになる努力だけ

マンションに帰ると、玄関ですぐに私を抱きしめた彼は、しばらくそのまま動かない。
私も彼にしがみつき、心を落ち着けようとしていた。


「大成さん、全部聞かせてください」


しばらくして私が言うと、彼は「うん」と返事をして、私の手を引きリビングに向かう。
ソファに並んで座った彼は、私をまっすぐに見つめながら口を開いた。


「千代子さんから澪のお父さんのことを聞いた。でも、澪にはどうしても言えなかった。できれば知ってほしくなかったからだ」


私はうなずく。
彼は私がショックを受けるとわかっていたからこそ、言えなかったんだ。
このままなにも知らず生きていけたほうが幸せだったかもしれないのだから。


「千代子さんは、澪との結婚はあきらめろと言ってきた。おそらく彼女は、もう俺との結婚なんてどうでもよかったんだ。だけど、俺と澪が幸せになるのが許せなかったんだと思う」