秋の月は日々戯れに
機嫌が悪い彼女の言葉には、常にない刺がある。
それに返事をしつつ受付嬢の様子を伺うと、箸で摘んでいた大根の欠片がポロっと皿に落ちたところで、ようやくハッと我に返った。
「どうした?餅巾着に何か問題でもあったか」
「何ですか、その悪意ある質問は」
彼女が睨みつけているのを無視して返事を待っていると、受付嬢は「そんなことはありません、とっても美味しいですよ」と笑った。
「すみません、突然ぼんやりしちゃって。お二人を見ていたら、どうやったら拓とさやかさんは元に戻れるのかなって、考えてしまって」
苦笑する受付嬢に、彼を睨みつけていた彼女の表情が変わる。
「ご相談というのは、もしかしてそのことですか?」
「あっ、はい」と頷く受付嬢。
「途中まで、凄くいい感じだったんです。結婚まであと少しのはずだったのに。それなのに……拓のヘタレ大バカ野郎が!」
彼は、再び受付嬢にスイッチが入るのを感じた。
「拓は皆さんが思っている以上に意気地なしだから、浮気なんて大それたこと一生出来るわけがないんです!それ以前にそもそも、私と拓はただの従兄弟で、それ以上でもそれ以下でもないのに、それがどうして浮気だなんて……」