君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
キミへの気持ち〜翼side〜
俺の前から走り去る春瀬を

追いかけたかったが、

春瀬が去り際に見せた表情を

見た瞬間にほんの少しだけ

拒絶されたような気がして、

俺はその場から動けなかった…

驚きと困惑…

そして切なく揺れる瞳が

俺の脳裏に浮かんでは消えていく。

春瀬のあんな表情を見たのは

初めてだった。

初めて出会ったあの日から、

春瀬はいつも優しく

包み込むような笑顔を見せていた。

あの時からずっと…

初めて見たのは学校までの道…

途中にある桜の木の下だった。

周りの誰もが携帯や話に夢中で

見向きもしない中、

春瀬だけが桜の木を

笑顔で見つめていた。

その時…

風に吹かれて粉雪のように

舞う花びらの中…

見上げる横顔は

初めてのものを見るような

キラキラした笑顔で、

手に落ちた花びらを大切そうに

手帳に挟んで胸に抱く姿。

その姿は綺麗で、でも儚くて

切ない瞳…

触れたら消えてしまうんじゃないか

と思った。

なにかを思って、揺れる瞳…

泣きそうな、その横顔に。

その姿に…

俺は一瞬で心を奪われた。

当たり前にあるものと信じて、

その一瞬一瞬を流れるように生きる

人間は少なくない。

失くしてしまって初めて

大切だと気付くのも、

あって当たり前だと思っているからだ。

俺もそんな1人だった…

でも春瀬だけは違った。

一瞬一瞬を大切にして、

当たり前にあるものを慈しむ。

きっとこの子は、

毎日が特別でかけがえのないものだと

分かって過ごしているんだろう…

愛おしい…そう思った。

そして、偶然にも同じクラスになり

クラス委員も一緒にする事になって

同じ時間を過ごすうち、

春瀬に心を奪われた理由が分かった。

優しく包み込むような笑顔も…

誰に対しても何に対しても、

いつも真っ直ぐに向き合う

一生懸命な姿も…

少しおっちょこちょいなところも…

ふとした時に見せる切なそうな瞳も…

目が離せない愛おしい存在なのだと。

俺はその時にやっと、あの時から

春瀬に特別な感情を

抱いていたことに

気づいた。












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