元社長令嬢は御曹司の家政婦
「どうしてくれるんだ」


取引先の人が帰り、お皿を洗っていると、ソファに座っていた秋人が疲れたようにため息を漏らした。

  
「内密にと言ったところで、人の口に戸は立てられない。
すぐに俺に婚約者がいるという情報が広がったっておかしくないだろう」

「いいじゃない、しばらくしたら破局したって言っておけばいいわよ。秋人の浮気とかで」

「なぜ俺の浮気なんだ......」


さすがに今日のはまずかったかもしれない。

何かを考え込んでいる秋人に取り繕うように言うと、ますます秋人は考えこむようにうつむいてしまった。


「こうなったら仕方ない、このまま結婚しよう」

「へ?」


うつむいていた顔を突然ぱっと上げたと思ったら、いつも通り冷静にそんなことを言い出した秋人。あまりの衝撃にお皿を割りそうになってしまった。
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