ロング・バケーション
思いがけない話に驚いちゃった
ドクターの初のお泊まりから二日後の夜、私は彼の部屋に招かれた。


「今夜はポトフにしたんだ」


得意の圧力鍋料理を披露するドクターの顔が嬉しそう。
それを見ているとこっちは胸が鳴ってしまい、食欲も湧くかな…と心配だったが……。


「美味しい。このジャガイモ!」


ほっくりと煮上がったジャガイモは甘くて、形も崩れてなくて綺麗なままだ。


「先生は…じゃなくて、航さんは本当に料理がお上手ですね」


感動を声に出したら、鍋のお陰だよと返事が戻る。


「それにしても美味しいですよ。ニンジンも玉ねぎも全部が甘くて香りがいい」


コクもある…と話すと、最後にバターを加えたからかな、と教えてくれた。

そうか、バターかぁ…と納得をすると、彼は牛のすね肉を切りながら……


「そう言えば、結婚……」


「えっ!?」


いきなりな言葉に驚いてフォークとナイフを持つ手が止まる。
聞き間違いかなと彼に見つめ、ぱちっと瞬きをした。


「あ…実は連携室の矢神さんのことなんだけど……」


主語を話す彼にホッとして、同時になんだ…と気落ちした。


< 128 / 262 >

この作品をシェア

pagetop