嫌われ者の怪物と空っぽの少女
4:手紙と花を君に
ある日、仕事を休んだと言う母から呼び出された。



また殴られるのかと思い、下を向き、重い足を無理矢理動かして母の元へ行った。



「ここ。座って。大切な話をする」


「…?…はい」



いつもより真剣な顔で、母はキッチンに置いてある椅子に座っていた。



神様のことがバレたのか、と少し恐怖しながら
マユはその向かいに腰掛けた。



「……この間、あなたを「生贄」と呼んだの。覚えてるわよね。」



「…はい」



少し声を小さくして、マユに体を近づけた。



「……あんたの家系の人は代々、神への生贄として捧げられてるの。」


「……その、いけにえ、って、なんですか……」




「…知らないのか。街の人によって、殺されるんだよ。高い所でね。神に命を捧げる者、それが生贄。」





「でも私は…神様はもっと良い奴だと思ってる……誰にも言えないけどな……」




まだ6歳のマユには衝撃的すぎる話だった。一瞬、理解が追いつかなかった。




最後の母の言葉はうまく聞き取れなかった。
神に命を捧げる。その言葉だけが、マユの頭の中を支配した。


「………あ……え…?」




街の人達に見つかってはいけない。街に行ってはいけない。そうおばあさんが言っていた意味が、ようやく理解できた。



「じゃ、じゃあ…お父さんとお母さんは……おじいさんは、……?」




恐る恐る、わかりつつある結果を母に尋ねた。




「神に捧げられて死んだよ。…どこでとは言わないけど」



「………ぁ…」




突然、吐き気と目眩がマユを襲った。



< 15 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop