私に光を〜あなたを信じるために〜
打ち明け
「よっしゃ!まだ先生来てない」
湊の一声が教室に響き渡り、私達は注目を浴びる。
「湊、どこいってたんだよ。探したんだぞ」
「そうだよ!つか、いきなりなんか雰囲気ちがかったからびびったわー」
湊の友達達が一瞬静まり返った教室をまた賑やかにさせる。私はホッとしながら着席した。でも、痛い視線が当たってくるのは変わらなかった。界君と目が合う。界君のおかげで仲直り出来たよ、ありがとうって伝えるためのピースと私のブッサイクな笑顔。界君は、少しだけ口角を上げてくれた。ニーって笑う笑顔まではいかないけどふって感じでね。

「遅くなってごめんなー。号令お願い」
例の高橋先生が教室に入ってきた。高橋先生は怖いで有名の英語の先生。
「起立、気をつけ、礼」
「"お願いします"」
「着席」
ただそれだけのこともなんとなく楽しく思えた。きっとこれもあれもそれもほとんど全部、湊と界君のおかげなんだろうな。

キーンコーンカーンコーン…

「やっと4時間目終わったぁ」
「給食だよ!」
私が独り言のように呟いたのに、誰も返してくれないと思ったのに理沙は返してくれた。天然すぎてわかってなかったり?それでも、反応してくれてすごい嬉しかった。
「やったね!」
嬉しさを隠しきれずに多分今私は幸せオーラが半端ないと思う。
「今日は麻婆豆腐だよ!」
それで理沙に幸せを半分こできたなら良かったって思うよ。
「麻婆豆腐最高!」
食のことについて舞い上がるとか本当に私は頭がご飯のことでいっぱいなんだなってね。



とうとう放課後。
5、6時間目は早かったな。別に好きな教科ってわけじゃなかったよ。でも、なんかそう感じたの。
「夏織!」
湊の声だ。今日はゆっくり振り向く。
「あの、すぐ部活?」
湊は私を呼んだとき、遠くにいたけど今はもうすごく近くに感じる。
「そうだけど、何かあったら聞くよ」
「いや、その、大したことじゃないんだけど…今、聞いてくれると嬉しいな。なんてね」
湊が可愛い。いつもは格好いい方なのになぜか今のなんてねとか可愛すぎた。こんな私はおかしい奴だな。
「いいよ」
可愛さのあまり、まともに湊の顔が見れない。
「ここじゃ話しにくいから移動しよ」
「うん」

ここは裏庭。人はいないから告白とかそういうときに活用される。けど、まさか湊が私に告るとかないし。
「ごめん。部活行きたいのに止めちゃって」
「いいのいいの。たまには私も湊の役に立ちたいし」
「いきなり本題に入るけどいい?」
「いい!」
「俺、ずっと夏織のことが好きだ!だから、よかったら、これからは幼馴染としてじゃなくて恋人として見てくれないかな」
湊のその溢れ出した思いが私の鼓動を早くする。
意外にも私は告られたことが結構あるけど、未だに慣れない。
答えは決まってるけど、それを発するのに時間がかかった。
「…ごめん。でも、告白してくれてありがとう!」
理由とか言って余計ガッカリさせたら嫌だから私はそれだけ言った。
「そっか。こちらこそありがとう!これからも幼馴染としてよろしく」
「うん!よろしく」
湊とグータッチをして私は部活へ向かった。これで湊のあの対応もなぜだったか繋がったな。



隣のコートでは翔君がバレーをしている。上手いな。スパイク打つ姿とかまさに絵だよ。
人に気を配りながらも自分のやりたいことをやる。そんな翔君に憧れや好きとか色んな思いが生まれた。でも、毎日のように翔君の感じが変わるように思うのはなぜだろう。
ああ、こんなこと考えちゃだめなんだ。翔君にはもう彼女がいるんだから。憧れを持つのはいいけど、好きは持ってはいけないの。そんなのおかしくない?って思う人いるかもだけど、これは私だけがただそう考えただけだから。
翔君がこちらを向く。目が合った…?キョロキョロ周りを見渡しているとやはり後ろには七花先輩がいた。見つめあってる。よかった…ふたりとも仲良さそうで…でも、まだモヤモヤするな…捨てようとか他の人を応援しようとか思ってからモヤモヤが増したよ。本当に今後私はどうなっちゃうのやら。


「片付けー」
部長の声が響き渡る。その声でみんなが一斉に動く。モップをかける人、ネットをたたむ人、ポールを持ち上げる人…私はボケーッとしていた脳を懸命に働かせてみんなと同様に片付けをする。けど、翔君や七花先輩を見ては自分の胸を痛みつける。気にしなくていいのに気にしちゃう。これは恋だからだよね?

「さようならー」
先輩方に挨拶をして1人学校を出る。
後ろから華奈達がついてくるのが怖かったから、私は急いで帰った。
最近、色々なことが起こりすぎて頭が噴火しそう。怒りとかそんなんじゃないけど。というよりも、心臓がもたないよ。女子との関わりがなくなってきちゃって、男子とばかり話してるからやばいよ。そのうち、新たなことが起こるんだろうな。
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