銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
2、思わぬ再会
「セシル、そこの本取って」

黒髪の少女が、本棚の一番上の本を指差す。

「エミリー様、これですか?」

梯子の上にいる私は、彼女を振り返って確認した。

「違うわ。その右隣りの錬金術の本!」

エミリー様は苛立たしげに言う。

私の両親が亡くなり、屋敷を焼失してから早いものでもう五年の月日が流れた。

今の私はもう公爵令嬢でも貴族でもない。

男爵家で働くただのメイド。

屋敷を焼失してから、クレアは私とウィングを連れて王都にある孤児院に逃げ込んだ。

父が処刑されたあの朝、門衛に捕まらなかったのは、たまたま運が良かっただけ。

恐らくあの時は宮殿の者も父が処刑されたことをまだ知らなかったのだろう。

だけど、追っ手が来て、私達は孤児院から荷馬車に乗り王都を出て逃走した。

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