輪廻ノ空-新選組異聞-

時流

「水が美味い」


井戸から汲み上げたばかりの水を柄杓に取って飲み干した沖田さんの言葉に、わたしはキッと視線を向ける。

「当然です!!」

生きていくのに必要なのだから。



沖田さんは池田屋から土方さんに支えられて戻った。

わたしは伝令も兼ねて、一足先に屯所に戻ったんだけど…

池田屋周辺の人垣が凄かった。

でも事情の行き渡らない町の人達には快く受け止められる筈もなくて…。

くそーって思った。

あんな凄惨な戦いを生き抜いた。何より、過激派浪士達の無謀を止めたんだから。

感謝してくれたっていいのに。

って言ったら、近藤先生も土方さんも沖田さんも

「感謝されたくて命をかけている訳ではない」

と、笑った。

「王城の地と、その民を護りたくてやってんだ。引いてはそれが大樹公の為にもなる」

と。



池田屋での新選組の働きは、余りにめざましくて、幕府を倒したいと思ってる過激派浪士達の属する長州はじめ、色んな方面で不穏な動きが起こった。


長州は藩兵を大阪に集めて、京に攻め入るらしい。

そんな情報がもたらされれば、監察方であるわたしは当然忙しくなって、山崎さんと一緒に大阪出張を命じられたばかり。


「大阪は京よりは涼しいでしょうから、しっかり避暑をしてきたらいい」

沖田さんは濡れた唇を指で拭いながら言った。

「あなたが…怪我をしても、どうやら傷が勝手に塞がるらしいと分かったし、少し心配も減りました」

刺されたこと、でもすぐに治ったらしいことを、沖田さんと一緒に近藤先生や土方さんに相談して…。生理がずっとこないのも、体が別の時代で老いないようになっているのではないか、という結論を、土方さんが下したんだ。
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