輪廻ノ空-新選組異聞-
「肌を…?」

「……見せるから…」



しん、とわたし達の間には沈黙が落ちた。

沖田さんは気まずそうに顔を逸らしたままで。

わたしは…

ごめんなさい。

嬉しくて。

こんなあからさまな焼き餅。



「す、すみません!」

わたしは勢いよく頭を下げた。

「とにかく早く確かめて沖田さんに安心して貰いたくて…」

何も考えずに飛び出してしまった。

頭を下げたまま、そう言ったら、沖田さんはそっと伸べた手でわたしの頭を撫でてくれた。

「すみません、あなたの判断は当然のもの。今は公務中ですから。なのにつまらぬ悋気を起こした私が悪いのです」

と、微苦笑の顔を向けてくれた。

わたしは慌てて首を振った。

「とんでもないです!…ありがとうございました」

何やらわたしも妙に照れながら答えた。

「では、重傷の人を頼みます」

と、沖田さんは再び目を閉じて、気分が悪そうな顔で言った。

「沖田さん。沖田さんも重症なんです。無理な我慢はせずに、苦しくなったりしたら呼んで下さい」

わたしは言い置いて他の怪我人のところに行った。



池田屋での斬り合いは、真夜中には収まって。

でも、めちゃくちゃになった中の検分が大変で。

随分遅れてきた会津と桑名の藩兵さん達も色々手を貸してくれたけど、上からの命がないと判断できないとか、手間の方が大きくて、余り捗らなかった。


陽が射してきて、悲惨で惨い池田屋の有り様と臭いに…


わたしは吐いた。

止まらなかった。

こんな所で倒れた沖田さんが無傷なことに、何百回、何千回…何万回感謝しても足りない。


奇跡だよ。


ありがとうございました!

神様、仏様。

そして、国清。

清光。



屯所への帰途。

悲惨で厳しい戦場だっただけに、隊列を組む全員が達成感と誇らしさで輝いてた。

新選組となって初めての大手柄だった。
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