雪と制服とジャージ
今日はバレンタイン
「バレンタインなのに、今日も雨かぁ……」

手のひらを空に翳す。ぽつぽつと雨粒が落ちてくるが、雪に変わりそうなくらい冷え込んでいる朝。
コートにマフラー、手袋で防寒はするが、冷たい雨は容赦ない。

お気に入りの水色の傘と、小さな紙の手提げに入れたチョコを持って、白い息を切らせながら、早朝から体育教官室に向かった。

「え、うそ」

思わず驚いて声が出た。

ああ……! 体育教官室の下駄箱は、扉がついていないんだ!
これじゃあチョコ入れたら、他の先生にバレちゃうよね。

しばし悩んだけれど、6時台から眠い目を擦りながらもここまで来たんだしと、小さなその手提げの口を折り込んで下駄箱へ入れる。

「これで……いいかな」

一歩下がって頷くと、突然背後から声がした。

「……何してんだ、お前」

心臓が口から飛び出るほど驚く。

氷上先生はまだ寝起きのようなぼんやりとした表情で、ゆらりと後ろから覗き込む。
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