エリート上司の甘く危険な独占欲
第三章 生まれたのは高鳴りか後悔か
『別れよう。やっぱり俺に、華奈はもったいないと思うんだ』

 人のよさそうな顔に悲しげな笑みを浮かべて、健太(けんた)が言った。

『そんなことないよ! なんで、いきなりそんなことを言うの?』

 大学一回生の最初の授業で隣の席になり、パソコンのソフトの使い方を教えてくれたことが縁で仲良くなった健太。ちょっと真面目で不器用なところがあるけれど、華奈を一生懸命喜ばそうとしてくれる。そんな優しい彼だった。それなのに、なぜ急にこんなことを……。

 戸惑う華奈に、健太が言う。

『俺みたいな……華奈と付き合うまで、誰とも付き合ったことのないような男に、華奈の彼氏は務まらないんだ。華奈だって本心ではそう思ってるんだろ?』
『思ってないよ! それに、私だって、健太が初めてできた彼氏だよ』

 健太が吐き捨てるように言う。

『演技だったんだろ。下手くそな俺に合わせてくれてたんだよな』
『違うってば!』

 健太は皮肉っぽい笑みを浮かべる。

『本当は……英語ディベートで同じクラスの牧野(まきの)の方がいいんだろ』
『え? なんで牧野くんが出てくるの?』
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