お見合いから始まる恋→結婚
10
引っ越しまで約一週間、私はあたふたと荷物をまとめていた。

自分の身の回りの物だけでも、思ったより大変だ。

「近いんだからまたうちに取りにくればいいのよ。そんなに神経質にならなくてもいいんじゃない?」

お母さんが腕組みをして段ボールに向かう私を見て笑う。

「うん、でも引っ越ししてからしまったと思いたくなくて。」

私はそんな風に笑う。

「この家に長く居すぎちゃったわね。」

私の荷物を見て、またお母さんが笑う。

「そう言えば私は引っ越しもした事が無いんだね。」

今度は私も一緒に笑う。

学生の時も就職の時も、この家から出る機会はいくらででもあったはずなのに。

私の部屋のドアが開いた。

「お母さん、大丈夫ですよ。こんなに近いんですから、うちにも遊びに来てくださいよ。当然陶子は来たい時に実家に来れば良いんだし。」

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