イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
王子様の正体

 父が倒れて数日、バタバタと家と病院を往復する日々が続いた。

 合間に時間を見つけては、入社の準備や他の用事を済ませた。

 通勤服や制服に合わせた靴などの他にもこまごまとした買い物があったし、父の勤める大学にも顔を出す必要があった。


 そして、突然父の元を訪れた羽根木さんのことが気になった私は、もらった名刺を元に彼のことも調べてみた。


 羽根木智明さん、26歳。

 華道 香月流五世、家元。


 名刺に書いてあった『香月流』とは、華道の流派の一つだった。

 国内におよそ100支部、また海外にも30近い支部を持つ一大流派で、羽根木さんは香月流の家元、100年を越える歴史を持つ香月流の御曹司、ということらしい。


 これまで父の口から華道はおろか、草花の話なんてまず聞いたことがない。

 父と羽根木さんの接点なんて、私にはやっぱり想像もつかない。

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