クールな次期社長と愛されオフィス
11章 湊が望むこと
11章 湊が望むこと


翌朝、いつものように店に向かうと、珍しく先にミズキが来ていた。

「アコさーん」

私の姿を見つけるやいなや、ミズキが泣きそうな顔で私に駆け寄ってきた。

「どうしたの?」

「私、アコさんに謝らないといけません。ごめんなさい!」

「謝るって何を?」

普段のミズキには見られない切羽詰まったものを感じ、胸がドキドキしている。

「昨日の晩、湊さんが1人でお店に来られたんです。アコさんがお休みだったので、私にも湊さんが色々と話かけて下さって。私もつい調子に乗ってしまって思わず言ってしまったんです。アコさんが社長から脅されているっていう話を」

「え?」

「ごめんなさい!アコさんすごく困ってたみたいだし、私もアコさんのために何か動きたくて。今だったら湊さんに助けを求められるって思っちゃったんです」

湊は知ってしまった?

社長から私が言われていたこと。

胸の奥がざわつく。

ひょっとして、その話を社長とするために昨夜は帰ってこなかったんじゃないの?

色んな不安が一気に頭を駆け巡る。

「ミズキ、今日お店の掃除あなたに任せちゃってもいい?」

「え?あ、大丈夫です」

私は泣きそうな顔で立ちつくすミズキに手を振り、そのまま会社に急いだ。

湊、絶対、絶対新規事業を手放しちゃいけないんだから!

どうか、間に合いますように。

私は電車を降り、改札をくぐりながら心の中で何度も祈るような気持ちで叫んでいた。

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