理系教授の秘密は甘々のはじまり

近づいてくる距離感

居酒屋からの帰り道、葉山は波実と葉山の本が入った紙袋を右手に持ち、左手で波実の右手を握って歩いた。

さすがの波実も、近すぎる距離と握られ続ける手に疑問を感じて葉山に意見をしてみた。

「あのー、教授、この手を離してはいただけないでしょうか。学会関係者もこの辺りにいるかもしれませんし」

「お前が危なっかしいからだ。さっきも転びそうになっただろ。勘違いされてまずいことでもあるのか」

「いえ、特には,,,」

確かに波実は、何にもないところで躓いてよく転びそうになる。今日も朝から何度も躓いては、葉山に支えてもらっていたのだ。

「俺は構わない」

そういう葉山を見て

"他人からどう思われようと気にしないんだろうな"

と思う。

まあ、それは波実も同じだが本人は全く気づいていない。

ホテルのロビーを抜け、エレベーターで部屋へ戻る。

「シャワーを浴びたら鈴木の部屋にいく。明日の原稿を準備しておけ。リハーサルをしよう」

波実が返事をする前に、葉山の部屋のドアが締まり、葉山は自室に消えていった。

有無は言わせない態度。

波実はため息をつきながら、自身もシャワーを浴びて、学会原稿を読む準備をした。
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