無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「駿太郎の作品を見るかい?」

田村は、アトリエの奥の倉庫と化している広い部屋に彩月を案内した。

「えっ?駿太郎の作品あるんですか」

嬉しそうな彩月の顔とは裏腹に駿太郎の顔が歪む。

「駿太郎は作品にも執着しないし、作品を持って帰って飾るとか、そういう選択肢はなかったからね」

駿太郎も知らなかったが、田村は駿太郎の高校時代からの作品を全て保存してくれていたらしい。

「わあ、駿太郎らしい絵だね」

白と黒を基調としたモノトーンのデザイン画。メリハリの効いたそれは感情という曖昧な物を一切排除しているように見えた。

「君の絵と正反対だろう?」

田村の言葉は、これまでたくさんの人に投げつけられてきた残酷な言葉を連想させて、駿太郎の心に影を落とす。

"君の作品には負の感情、もしくは無機質な彩りしか感じ取れない"

それは、何よりも駿太郎自身が自覚してきたもの。

彩月にもそんな風に感じられてしまうのだろうか,,,。

「自分にないものにとても惹かれます」

予想に反した言葉を彩月は言った。

駿太郎の心に暖かい何かが射し込んでくるのがわかった。

愛しい気持ち。

「ありがとう」

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