イジワル専務の極上な愛し方
元カレと再会しました
十四時になり、秘書室に内線の電話がかかる。それは、ビルの受付からで、祐一さんの来訪を知らせるものだった。

ぎこちない緊張感を覚えながら、いつもどおりに業務を進める。すると、ほどなくして秘書室のドアがノックされた。

いよいよ、祐一さんと顔を合わせるんだ……。私だって分かるかな……。

ゆっくりとドアを開けると、ホームページで見たとおり、華やかさというより派手さをまとった祐一さんが立っていた。

「浅沼祐一です。今日は、無理を申しまして大変失礼をいたしました」

私と目が合っていても、彼はビジネスライクな雰囲気を崩していない。もしかして、気づいていないとか……？

それならそれで、構わない。思い出話をしたいとも思っていないし、私から声をかけるのはやめておこう。

「いえ、とんでもないです。どうぞ、こちらが専務室になります」

ドキドキと、心臓がイヤな音をたてる。専務室のドアをノックして、祐一さんを案内すると、翔太さんへ挨拶をしていた。

やっぱり、私だと気づいていないみたい。ホッとしながら給湯室へ向かい、お茶の準備をする。

学生のとき以来だから、私の雰囲気も変わっているかもしれないし、まさかここで専務秘書をやっているなんて思ってもいないはず。

それに、祐一さんから私をフッたのだから、気づいていても声をかけづらいのかもしれない。

そんなに心配しなくて、大丈夫だったな……。

「失礼いたします」

お茶を用意し、専務室のドアを開ける。二人はソファで向い合って、タブレットでなにか話をしていた。業務提携を目標に話し合うと聞いているから、話も込み合うものになるはず。

二人の会話を邪魔しないようにと、そっとお茶をテーブルに置くと、ふと祐一さんが私に目を向けた。
< 44 / 107 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop