なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬革胡の音色
 夜伽が滞りなく行われたことは、寝所を見れば明らかだった。


 加えて、陛下のご機嫌の良さと朱熹の首筋につけられた赤い接吻の跡。


 今香は、恥ずかしがる朱熹を説得し、これみよがしに赤い跡が見えるように髪を結い上げた。


 これまで後宮に一度も訪れなかった陛下が残した寵愛の印。


 いくら紫家の令嬢で皇后とはいっても、陛下からの寵愛がなければ他の妃たちと身分は大して変わらない。


 地味な容姿の朱熹に中傷する妃もいたが、一夜にして後宮内勢力図は変わった。


 朱熹を悪く言うことは、陛下を侮辱することと等しい。


 陛下の寵愛を受けたということは、それほど絶大な力を持つのである。


 曙光が朱熹の部屋を訪れてから二日後。


(なんだか大変なことになったわ。今まで以上に後宮内に居づらいわ)
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