愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
大人な彼の恋愛指南
◇◇◇

桐島さんと交際を始めてふた月ほどが経ち、咲き始めた紫陽花の花が六月の梅雨に濡れている。

時刻は七時十分。

階段の下から二階にいる桐島さんに聞こえるように「朝ご飯ですよー!」と声を張り上げた私は、お盆を手に居間へ入る。

座卓に炊き立てのご飯とあさりの味噌汁を並べて、それから醤油差しを出していないことに気づき、台所へ戻ろうとした。

階段を過ぎて、台所の暖簾を潜る手前で彼が階段を下りてきた足音を聞く。

私が振り向く前に後ろから抱きしめられて、心臓を跳ねらせたら、素敵な声を耳元で聞いた。


「おはよう、俺の可愛い有紀子」


桐島さんは“ちゃん”付けをやめて、今は私のことを“有紀子”と呼ぶ。

その方が恋人らしい気がするので、私が頼んだことなのだが、砕けた話し方に変えたのは彼の意思である。

日本に住まうようになり、五年以上が経ち、自分の話し方が少々堅苦しいのではないかと最近気になっていたのだとか。

< 146 / 258 >

この作品をシェア

pagetop