愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「誰にですか?」とキョトンとすれば、「大家さんの仏前にです」という答えが返ってきた。

彼が照れ隠しのような笑い方をして言う。


「有紀ちゃんとの交際を、大家さんに許してもらわなければ。どうにも後ろめたい思いを拭えず……」


桐島さんは、これまで私のことを、手を出してはいけない聖域のように感じていたそうで、彼の方としても恋愛対象に入れないように我慢していたらしい。

彼と出会った時、私はまだ十八だった。

今はもうすぐ二十三歳になろうという大人だけど、その思いを引きずっているため、私の祖母を裏切るような罪悪感に似た思いがあるのだと、彼は正直に打ち明けてくれた。


居間の仏壇の前に並んで座った私たちは、祖母の位牌に向けて手を合わせる。

私は祖母に、桐島さんと交際を始めることになったと心の中で報告し、それから隣を見れば、桐島さんはまだ目を閉じて祈っている最中であった。

誠実そうな横顔に、私の中に安心感が広がっていく。

恋人としてどう振る舞えばいいのか、わからないことだらけだけど、優しい彼にひとつひとつ教えてもらいながら、始まったばかりの関係を確かなものにしていきたい……。

遺影の祖母は、私たちを祝福してくれているような、穏やかな微笑みを浮かべていた。

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