クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
6.優しい唇
大嵐の翌朝、私は横手さんの家から直接出勤した。新宿の街を横手さんと仲良く並んで歩いて会社に到着。
エントランスで山根さん持田さんコンビと会い、早速指摘される。

「真純先輩!昨日と同じ服!さては嵐で帰れなくてお泊りですか!?誰と!?」

いっきにまくしたてられ、こうなると思っていたとはいえ、言葉に詰まる。横手さんがうふふと嬉しそうに笑う。

「山根、残念でしたー。阿木さんは私のおうちにお泊りです。お夕飯もお風呂も一緒でした。私の部屋でベッドの隣にお布団敷いて寝たんですー」
「はあああ!?」

山根さんが若干キレ気味に聞き返してきた。

ええと、事実です。
横手さんに救出された私と千石くんは彼女の家に招かれた。会社近くの高層マンションの一室にはお母さんと大学生の弟さんが待っていてくれた。お父さんは出張だそうだ。
お金持ちの豪邸を想像していたので『思ったより庶民的』と思ったら大間違い。このマンションはセカンドハウスだそうです。平日は都内ど真ん中のマンション、休日は郊外の豪邸で過ごすという桁違いなおうちでした。は~。

話を戻して、マンションに着く頃に停電は復旧していた。駅に向かってみるとお邪魔するのを遠慮したのだけれど、横手さんのお母さんがお夕飯を食べて行ってと言うのだ。
千石くんも久し振りに横手さん一家に会うようでなごやかなムード。断りづらいし、ご用意いただいて悪いので、お夕食をいただいた。千石くんは食後にタクシーで帰宅。

同じタクシーで便乗して帰ろうとしたら、横手さんに「阿木さんは泊まっていってください!」と泣きつかれてしまった。千石くんは不満そうだったけれど、結局私だけお泊りさせてもらうことになったのだ。
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