覚悟はいいですか
「護衛に焼きもち焼かないでください。めんどくさい…」
「や、焼きもちなんかじゃない」
「礼坊っちゃん、手は出しませんから」
「「当たり前だ!」」
俺と志水に同時に怒鳴られても、ジョルジュは人差し指を立てて「しー!紫織さんが起きちゃいます!!」と逆に注意してきた
いや、お前が紫織って名前で呼ぶな!
「紫織さん、絶対に傷付けない」
えっ?今、百鬼がしゃべった……?
「護衛チームの中で不埒な奴、私が制裁、加える。健気な紫織さん、私が護ります」
「「「!」」」
どうやら紫織の話を聞いて、庇護欲を掻き立てられたらしい。いや、父性を刺激されたのか?
「礼様、百鬼が言うなら何も心配ないでしょう。な、ジョルジュ?」
志水がいち早く立ち直って聞くと、ジョルジュは青い顔をしてぶるぶる震えながら「絶対にありません!!」と言う
百鬼の強さは護衛チームはもちろん、格闘技に携わる者、特に実践で関わる者で知らない者はいない
「山口さんには複数のグループだか組織が常に付きまとっているんです。まだ交渉に至っていませんから敵味方の判断が今の段階ではつかない。いざという時に、山口さん本人が我々を認知していないと、みすみす敵に渡すことになりかねません。
それとも礼様は、山口さんに何か起きてもいいのですか?」
「それはダメに決まってる」
「では決まりですね。
明日、昼過ぎにこちらへ伺いますので、ちゃんと彼女に伝えておいてください」
紫織を守るためだと言われれば了承しないわけにいかない
もともとは俺のつまらない嫉妬が原因なのだ、邪魔になる感情はしぶしぶ収めたーーー
明日からの段取りといくつか仕事の話をして、志水達は持ち場に帰って行った―――時計を見ると23時を回っている
一度頭をリセットしたくて浴室へ向かう
熱いシャワーを浴びて一息ついてから、紫織の様子を見ようと寝室へ向かった……