覚悟はいいですか

「う~ん、やっぱり問題は佐伯部長だね」

「「「ですね」」」
ハモッちゃったよ

「佐伯部長、悪い人じゃないんだけどね、アナログ人間だから」
と私

「外出や出張多いんだから、絶対このアプリ便利なのに」
このアプリを開発担当した円香が悔しそうにつぶやく

「いくら部長に説明しても聞く耳持たんし」
OJT担当の入社4年目・片平久美子(かたひら くみこ)は諦めモードだ

「え、使用方法、動画まで作って送ったよね?」
「動画の開き方、分からないらしいですよ」

なんと!そりゃまいった……

「部長が理解しないと、そこで止まっちゃいますね」

「最悪、月末に佐伯部長のデスクまでフォロー行かなきゃいけないかも……」

「「「それこそ無理ですよ!」」」

またまたハモった……


うちの経理部は1課が社外との取引関係を担当し、2課は社内のこまごました経理を担っている
毎月月末に決済があり、それをもとに立替金などを支払っていくが、この清算処理でよく営業ともめるのだ

百貨店や個人店とのを取引が多いから、営業さんは全国を飛び回り、ほとんど社内にいない
結果、出張費などの伝票の提出が遅れたり、ため込む人が多くなる

そこで私たち2課は、プログラミングの得意な円香を中心に、モバイル機器で清算ができるアプリを開発、現在他部の協力を得て試用期間中なのだ


まずはシステム事業部と秘書課に1か月試してもらい、今月からは営業部に試用をお願いしているが、肝心の佐伯営業部長が全くの機械音痴

各部長クラスに向けた説明会はすでに終了しているが、全く機能していないのが現状で、このままではすべてが水泡に帰してしまう

まさしくプロジェクト存亡の危機である


「僕の方でもことあるごとに頼んでるけどね、
『わかったわかった』っていうからてっきり順調かと思ってたよ」

松本課長も頭を抱えてる
まあ、ヒエラルキー重視の佐伯部長じゃ、課長の意見は右から左だろうな……

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