皇帝陛下の花嫁公募
第三章 市場で運命の出会い
 リゼットは祖父の屋敷でしばらくおとなしくしていたが、数日経つと、じっとしていることに耐えられなくなってきた。

 すぐにでも試験が始まるのかと思っていたが、よく考えると、まだ花嫁を募集している最中なのだ。期限までは受け付けているのだから、今はまだ試験もないということだ。

 そこで、リゼットは護衛を連れて、街にこっそりと遊びに出かけた。

 もちろん少年の姿でだ。王女だとばれることは、この街ではないだろうが、念のためだ。それに上等なドレス姿で市場などには行けない。

 わたし、一度でいいから市場に行ってみたかったんだもの。

 育てた農作物の一部が市場に送られることを知ってはいたものの、市場というものがどういうものなのかは知らなかったのだ。

 それに、もし皇妃になれたとしたら、市場なんて二度と行けないと思うから……。

 どこかの裕福な商人の奥様にでもなれば、機会はあるかもしれないが、こんな格好で出歩けるのはやはり今だけなのかもしれない。
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