私は強くない
元カレ
「シャワーありがとうございました」

髪の毛を乾かしながら、倉橋が戻ってきた。

コーヒーを飲みながら、倉橋に話をした。

「…一人で我慢しようとするなよ」

俺が言った一言で、倉橋が泣いた。
泣くなとは言わない。泣きたい時は、泣けばいいと俺は言った。
その言葉が少しでも、倉橋を解放することが出来るんだったら。

ありがとうございます、の言葉が最後まで出ないまま、涙を流す倉橋を再び抱きしめていた。

「名取課長…」

昨日の夜とは違う、二人共酔ってはいなかった。
俺の腕の中で、顔を上げた倉橋と視線が絡み合った。
涙を流しながら、目を閉じた倉橋に唇を重ねた。


もう、引き返せない。

倉橋、俺は君が好きだ。
ずっと好きだった。
この思いは、叶わないと思っていた。

これからどうなるか、分からないが、お前を大事にしたい。

そう、強く心に決めた。



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