極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜

Chocolat,04 ほんの一瞬の心地好さ

瞼を開けて最初に視界に入ってきたのは、どこか優しい表情をした篠原だった。彼の腕に包まれていることに気づいたのは、その直後のこと。


私たちを包む肌触りのいいシーツからは、篠原の匂いがする。


「……先生って暴君だっただけじゃなくて、本当に最低な人だったんですね」


ほんの一瞬でも心地好い、なんて考えてしまったことを隠すために吐いた言葉。そんな私に対し、彼はどこか幸せそうに瞳を緩めて笑った。


「それはどうも」

「褒めてません。『先生のことを本気で見損なった』と言ったんです」


淡々と告げると、篠原が眉を寄せて微笑んだ。


「よく言うよ。お前だって、ちゃんと同意しただろ……」


「はい⁉︎ いったい、どれだけ自分勝手な解釈をすれば、そうなるんですか⁉︎」


思わず大声を出すと、彼が心底呆れたようにため息をついた。


「あのな……お前は他人に流されて、簡単にセックスするような女じゃないだろ。もし本気で嫌だったら、絶対にもっと必死で抵抗するだろうが」


キッパリと言われて戸惑いながらも、なんとか口を開く。


「そ、それは……先生が『全部俺のせいにしていい』って……」

「バーカ。同じことをあのバーコードハゲの編集長に言われたら、お前は納得してあいつに抱かれるのか?」

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